先日、取材を受けた雑誌が完成して、発行人の松田さんから送っていただいた。私のパソコン技術ではそのままHPにアップできないので、写真(ピンぼけだが)と内容を掲載することにする。
発行人の松田さん(女性)は6年前、ご主人の転勤で岡山に引っ越して来られた方。専業主婦から一念発起、月刊雑誌の発行を始められた。私の掲載号は第22号。興味のある方はお問合せいただきたい。
メールは matsubox@ms7.megaegg.ne.jp です。
岡山の街に出かけよう
応援したい人、見つけた【recipe 058】 2006.10.04
今井式パンフルート「備前の風」 岡山市雄町
   − 澄み渡る青空のような、パンフルートの響き
 
フルート? オカリナ? 素朴で清々しい音色が響いた。20号でご紹介した森田さんのラジオではじめて聞いたパンフルート。「あれは、吉井川の河川敷の竹を使って作られているんですよ」と聞いたときは、本当にびっくりしました。竹からあんな音が出るなんて! 幼い頃から身近にあった竹だけど、楽器になるなんて思いもしなかったな。本人の今井 勉さんも、パンフルートも何も知らずに作りはじめ、出来上がったものが世界最古の楽器といわれる「パンフルート」だということを、後で知ったのだとか。そのプロセスがとても興味深く、実物を間近で見てみたくて、工房を訪ねました。
 
歌うように音を出す?
工房にはローストされ、油抜き処理された竹がサイズごとに積み上げてありました。まさしく竹ですね! 「音が出る原理はとてもシンプル。野原に瓶を置いて風が吹くと、自然に音がなりますよね。あれと一緒。ほら、こうやって…」と、息を吹きかけてみると…わ、私でも音が出た!(かなり嬉しい) 「僕は楽譜が読めないんです。でも、パンフルートは音を探しながら吹いていくので大丈夫。僕も全く楽譜は見ずに、200曲くらいレパートリーがあるんですよ(笑)。歌うように音を探す。そうですね、どちらかというと、けん玉やヨーヨーみたいに体で覚える感覚に近いのかも」
 
子どもにも吹ける笛って?
どんなプロセスで出来たんですか? 「僕は大阪でカヌーのインストラクターをした後、営業マンに。その後、うつ病を患ったんです。40歳を前にこれからは心と体に優しい働き方をすると決めました」 竹を見つけたのは持っているカヌーで何かができないかと、吉井川を下っていたとき。子ども達と工作をしようと持ち帰り、横笛を作ったのだとか。「子どもはうまく音を出しました。でも、いざ演奏しようとすると指が届かない。そこで、幅を狭くしたり、縦笛にしたり、でもうまくいかなくて」 どうしたものかと、図書館で工作の本を調べていたら、水道管の筒を並べたものが紹介してあった。「指で押さえることもなく、口を持っていけば誰でも音が出る。見よう見まねで作ってみたら、実にきれいな音が出たんです!」1年半前のことでした。
 
おばあちゃんとの出会い
学生時代はバンドでボーカルをしていた今井さん。これを通じて音楽の楽しさを広められたら、という願いもあったのだとか。「まずはパンフルートを知ってもらおうと介護施設を中心に演奏に回りました。それでもね、これでいいのかなという迷いは常にありました」 ふっきれたのは、寝たきりのおばあちゃんの横で演奏をしたとき。『花嫁人形』の演奏後、おばあちゃんの閉じた目から涙が流れた。「自分の演奏を心から喜んでくれる人がいる。差し伸べてくれたおばあちゃんの手があたたかくてね。いろんな迷いがふっきれました。今は1人でも多く、パンフルートの音色を知って欲しい。小さい子から年配の人まで、誰でも吹けるこの楽器を広めたいと思っています」 澄み渡る音色は青空のよう。ぜひ、皆さんも機会があれば聞いてみて下さい。