ここのところ工房にいる時間が多い。乾燥した女竹を油抜きする作業に、没頭している。
私の油抜きの方法は、火で竹をあぶる方法を採用している。竹の表面がきつね色のエナメル質状態になり、ニスなどの塗装を施さなくても、独特の風合いをかもし出してくれるからである。しかし油断してしまうと、竹に色むらができてしまうので、慎重に行わなくてはならない。火であぶる油抜きをすると竹の質が変わり、実に響きのいいパンフルートができあがるのである。その分手間と時間がかかり、20管の『備前の風』をひとつ完成すると、正直ぐったりする。材料の下準備から計算してみると、20管ひとつ製作するのに3日はかかっているだろう。そんなこんなで、トップページにも予告を記したが、現行の普及価格は年内いっぱいにして、来年から値段を大幅値上げさせてもらおうと思う。最低限の生活が補償できるくらいの収入を得なくてはならないのである。
 ところで工房で作業している時にも休憩時間中に『備前の風』の練習は怠らないようにしている。今週の金曜日の演奏で披露するクラシック4曲メドレーが最大の難関である。「ジュピター、威風堂々、モルダウ、家路」どの曲もスケールの大きい曲ばかり、オリジナルキーなので半音もいっぱい出てくる。やりがい大いにありである。
 数日前、休憩中にふざけて適当に吹いていたら、段々形になっていって、気がつけば「ルパン3世」のテーマを吹けるようになってしまった。パン・デ・デューのウォルティさん的な破裂音的低音奏法を参考にして、結構かっこいい演奏ができるようになった。(自我自讃)早速今週末の「フリマ会場でのパフォーマンス」で披露してみよう。
 それからもう一つ、大きな発見をしてしまった。「缶コーヒーBOSS」のテレビCMで流れる八代亜紀さんの「舟歌」に合わせて、演奏してみたところ、とっても雰囲気が合うのである。試しにその後、その「舟歌」と「雨の慕情」を練習してみると実に、『備前の風』の音色と曲が合うのである。すると、ふと気がついた、八代亜紀さんの声質って、パンフルートの音色に似ているよなー。日本歌謡界のパンフルートボイス、八代亜紀なのである。
いつか競演してみたいなーと、おこがましくも思うのである。
 ちなみに、尺八的な音出しと、うねるようなメロディーの演奏の仕方をすると、「石狩挽歌」も実に「ぐっ」と来る演奏ができることが判明した。パンフルートの可能性って結構無限大かも。