振返ると、今年に入ってからたくさんのコンサートやイベント、テレビ出演、そして工房に来客と、急激にたくさんの人の前で演奏する機会が増えていった。演奏や歌、それにステージでの私のパフォーマンスを喜んでくださる方が、予想以上にたくさんいて嬉しい限りである。最近は、ときどき「今井先生」なんて呼ばれることもあり、なんだかお尻の当たりがむずがゆくなるときもあるくらいである。「俺がすごいのか?『備前の風』がすごいのか?ま、どっちでもいいや。」
 頑張ってきた甲斐があってか、夢がすこしずつ大きく現実化していっている観がある。「よし、よし。順調、順調。」「俺、なかなかやるじゃん!」みたいな気持にもなるものである。もし「今井が天狗になるまで」と画面の下にカウントダウンの映像が入ったとすれば…けっこう直前の時間が記されているかもしれない。
 しかし現状は…『備前の風』を製作して販売しない限り、安定した収入はないのである。いくら天狗になっても、工房で竹と向き合うと現実に引き戻されるのである。『備前の風』作りは、私にとっては真剣勝負である。ノコギリやヤスリ、ナタやカンナ…常に鋭い刃物を持っての作業である。気を緩めれば、竹だけでなく、自分の指も切ってしまうのである。実際、何回か指をナタやカンナでざっくり切ったことがある。歌口へのヤスリのかけ方ひとつ違うと、音色も全く変わってしまうのである。非常にデリケートな作業がいっぱいあるのである。
 パフォーマンスで高揚した気分、賞賛を浴び浮かれてしまいがちな気分を、工房に入ることで静めることができるのである。今の私にとっては、精神的にも必要な場所なのである。すぐそばに両親がいるということも、私の精神を落ち着かせている要因の一つでもある。もちろん家族の存在(妻1人、子供2人)のおかげも、言うまでもないくらい、私の精神を支えてくれているのである。お金の心配は多々あるが…充実した気分で日々過ごせている。感謝である。だから不倫も愛人もないのである。
 今日、13管の『備前の風』がようやく2個できた。これは、知り合いの妹夫婦の子供の誕生日プレゼント用なのである。今週末の日曜日、夕方に誕生会があるとのこと。そこに伺い、直接納品である。そして、デモ演奏&ミニ・パンフルート教室を行う予定である。子供たち、喜んでくれると嬉しいな。そして、その足で九州に向うつもりである。