出演依頼は突然やってきた。
私は午前中、工房にいるときや車で移動中の際、よくラジオを聞いている。地元岡山のFMやAM、それからよくNHKラジオの全国放送を聞いている。NHK第1放送は11:30まで「今日も元気に わくわくラジオ」を放送している。その番組のお便りの今週のテーマが「私の事始め」であった。私の事始めは「CD発売に伴い、全国区を目指す」ことなので、そのことを昨日番組にメールしたのであった。
 すると、今朝NHKより電話がかかり、電話インタビューさせてくれないかとのことであった。昨日遅くまで起きていた私は、お恥ずかしい話、朝9時頃まで寝ていたのである。妻に叱られながら起きて、眠気顔で朝食を食べているところに電話がかかったのである。「30分後に電話してもよろしいですか?演奏もお願いできれば」とのこと、この機会を逃してはいけない。私は寝巻きのまんま、「わかりました」とすずしい声で返事して、大急ぎで着替え、パンフルートを持って車に飛びこんだ。どこか演奏が出来る場所に移動しなくては!!思いついた場所は、近所のスーパーの屋上にある駐車場であった。
 幸い駐車場には人気(ひとけ)がなかった。車を止めて、パンフルート演奏のウォーミングアップ。そうこうしているうちに、携帯電話が鳴った。番組からの電話で、アナウンサーの方である。パンフルーティストになったいきさつと、CD制作についてインタビューを受けた。5分ほどのインタビューの中で、生演奏もさせていただいた。しかし初めての経験である。自家用車の中から携帯電話を通してパンフルートの生演奏を全国のラジオリスナーに聴いていただいたのである。曲はCDにも録音している、「川の流れのように」のダイジェスト演奏をソロで1分30秒演奏した。アナウンサーのMさんには「1分ほど」と言われていたのであるが…
 出演後、自宅に戻り朝食を改めてとって、出かけたのであるが、車のラジオのスイッチを入れてみると、ちょうど番組のエンディングを迎えるときになっていた。そこでびっくり仰天な出来事があった。
 1時間30分前の私のパンフルートの演奏を聴いて、全国のリスナーの方からの感想メールがもう届いていたのである。しかも何通もである。「澄んだ音色に感動した」「演奏を聴いてたら涙が溢れて止まらなくなった」「優しい音色に、ぴりぴりしていた気持ちが本当に癒された」「これからも頑張って演奏続けていって!!」などなど、演奏者の私としては心からうれしいコメントばかりであった。コメントの紹介後、アナウンサーのMさんが「CDができたら、今度是非東京のスタジオに来ていただきたいですね。」ともおっしゃってくれていた。
 今年の正月、家族といった初詣でおみくじを引いた。私は「末吉」であった。少々複雑な思いでいたが、今日これまたNHKテレビで「末吉は頑張った末に、必ず吉が待っている」という意味であると「ことばおじさん」がおっしゃっているのを見た。私の『備前の風』全国進出の頑張りは今始まったばかりである。長い道のりになるだろうが、一歩一歩歩むように頑張っていれば、いつかはきっと全国のみなさんに、私のパンフルートの音色を届けることができる、と確信を持てた思いがした午前中の出来事であった。