今、昨年の春に注文いただいたパンフルートの製作に入っている。注文から随分時間も経っているので、いざ製作の順番がまわってきた方に確認の電話をかけてみると、状況もいろいろ変化しているようで…注文をキャンセルされる方も何人かいらっしゃる。残念な思いもするが、待たせるだけ待たせてしまったこちらに責任はあるといえる。そんな中、3月に注文くださった方の仕事先に、納品に伺う。パンフルートを初めて見る同僚の方の為に、事務室で「朧月夜」「川の流れのように」をデモ演奏する。今回納品に伺った方は、昨年私の演奏をとある行事に組み込んで下さった方である。久々の再会であるが、パンフルートよりも私の歌をえらく気に入ってくださっている。先日の三重県でのコンサートの時もあったのだが、CDに私の歌も入っているのか聞いて来る方が何人もいらっしゃるのである。嬉しい話である。学生のころは、クイーンやツェッペリンなどをシャウトして歌っていた。今はまったく歌い方が変わってしまった。というよりも歌に対する姿勢、考え方などなどすべてが変わってしまった。病気を経験したことと、パンフルートを聴いて楽しんでくださる観客のみなさんが私の音楽観を変えてしまったといっても過言ではない。
 納品後、ふとそんなことを考えていると大好きな吉井川の河川敷に車を止めていた。明日はヴォイス・パフォーマンスの練習日(トップページ参照)。「誰も寝てはならぬ」の練習をしておこう。でも、そとは激しく雪が降っている。しょうがないので、後部座席で発声練習と歌の練習をする。パヴァロッティもカレーラスもドミンゴも大好きだが、物まねをしてもしょうがない。自分自身のテノールを磨こうと頑張る。それにしてもこの歌は短い割にカロリーがとても必要な歌であることあること…。そういえば、ここ数ヶ月、耳鳴りが結構ひどい。もしかすると締めきった車の中で、声楽風な歌の練習をしているせいかもしれない。日没も過ぎたであろうころ、歌いながら窓の外を見ると、水辺でタヌキの兄弟(親にしては小さかったので)が車の方を見ているのに気がついた。車からもれる「誰も寝てはならぬ」の歌声に興味津々のようであるが、結構雪も「しんしん」と降ってきたので、二匹は足早に藪の中へ消えていった。
 今私の手元に発売予定のCDの仮盤がある。演奏力はまだまだ未熟だが…自分の作品なのに… 音に遠赤外線でも含まれているのかと思うくらい、聴くと暖かくなるのである。自分の作品なのに… 駄目だし出来るところは山ほどあるのに、布団に入ってイヤホンで聴いたりすると、心に湯たんぽを抱えたかのように、安らかに眠れるのである。自分の作品なのに… 自分が演奏するCDに癒される自分である。自分のオンエアーを見て自分を好きになる「さんちゃん」とはちょっと違う感覚ではあろう。今回のCDのキーワードは「縁側で日向ぼっこしながら童謡を歌うおばあちゃん」と「海苔茶漬け」だと思う。そのキーワードの解説は、NHKの「わくわくラジオ」に出演したときに解説することにしよう。って、本当に出られるのだろうか?   あさって、CDの最終ミックスダウン前の打合せをする予定である。この様子だと発売が少々延期になるかも…。