6月9日以来の日記である。日記というよりも、月報に近くなってきた。
 保育園(子ども向けと保護者向けそれぞれ)、介護付きマンション、小中学校の先生を退職された方々の集まり、某市の保育園の先生など関係者の集まり、岡山市内の小学校の行事、温泉リゾートホテルのキャンドルコンサート、民家の大きな応接間、広島は大竹市のチャリティコンサート、そして大阪ABCラジオの看板番組、また地元のテレビ出演。実にバライティに富んだ演奏会場を、ここ数週間で経験させてもらった。
 どんな会場であろうとも、一生懸命演奏してしまっている。当たり前のようで、もしかすると、これって不器用だからなのかもしれない。コンサートの翌朝には、腰から背中にかけての筋肉が「コリコリ」になるのである。腹式呼吸を心がけているせいなのか、はたまたやり過ぎか。起床直前に妻にマッサージしてもらわなくては、起きられないくらいである。「せんべい布団」のせいで、腰が痛いのもあるかもしれないが… 腰だけではなく右肩から首筋にかけての筋肉も、二時間近いコンサートをやった翌日にはぱんぱんになっているのである。私のパンフルート『備前の風』は左右どちら向きでも演奏可能であるが、私は左手側に低い音、右手側に高い音がくる持ち方、つまりルーマニアの伝統とは左右逆の配列で演奏している。演奏時の90%近く、ビブラート効果をだそうと、特に楽器を持った右手が常時前後に動いているのである。のびやかなフレーズでは、ゆるやかで大きな振り幅のビブラートを、そして感情が強くこもった場面では、細かくそして切なげなビブラートを心がけるなど、右手が前後左右そして斜めにと、いろんな方向にいろんなテンポで動き回っているのである。たぶんそのせいで、右肩まわりが左より疲労しやすいのであろう。
 この疲労感は、実は最近特に感じるようになってきたことなのである。それはきっと私の演奏スタイルが変ってきたからだと思う。以前であれば、演奏中最も気をつけていることは、メロディをいかに忠実に再現するかということであった。しかし今は変わってきている。例えば、四分音符一つとってみても、最近ではパンフルートの「うねり効果(初めて使う表現だが)」を利用して、のぼりのうねり、くだりのうねり、アップダウン、ダウンアップ、その他激しいビブラート、かすかなビブラート、ストレートな音、音量が強弱強、弱強弱、強弱弱、弱中強、ハスキーな音色、つややかな音色、野太い音色、繊細な音色…などなど、その四分音符の曲における位置、前後の関係、歌詞の意味などによって、細かく表情をつけるようになってきたのである。一音一音区切って考えるのではなく、曲全体の流れをいつも感じながらであるが、結果的に一音一音に楽譜上に指示されていない表現を、自分なりに、時には計算して、時には発作的につけているのである。演奏中は集中しているせいか、額のあたりの脳(前とうよう?)の血流が激しくなっているような気がする。そのためか、一曲ごとのカロリー消費量は以前に比べてかなり多くなっているはずである。
さしずめ、自分の演奏表現に、身体がやっとついてきているという感じかもしれない。私にとっての「精進」は、心を磨くことと、演奏に耐え得る身体作り、今はその二つが大きく占めているといっても過言ではない。
それはさておき、今発売しているCDの録音は昨年の年末にしたものである。今聴くと自分の演奏が「初々し過ぎて」少々恥ずかしくもある。今回1000枚制作したが…追加制作は… それよりも今の自分らしい演奏のCDを新たに作るべきか… どうするかはまだ決めていない。
追伸 10月に東京でコンサート実施が決まるかもしれない。今、そんな状況である。