七月中旬の三日間連続でNHKテレビの取材を受けた。パンフルートを作るきっかけとなった竹と巡り合った場所、そして工房で楽器製作する様子、病院での演奏風景、四国で行ったコンサートの状況など、私とパンフルートにまつわる様々なシーンを撮影・インタビューしてもらった。気分はまさに「情熱大陸」の取材を受けているようである。例えが民放で申し訳ないが…。  さて、その特集のダイジェスト版が8月26日の朝「おはよう中国」という中国地方限定の朝のテレビ番組で放送されることになっている。
 そして、先日27日は私の44歳の誕生日であった。今年の誕生日は、すさまじい思いでだらけの誕生日になったのである。まずは朝7時からのコンサートである。自宅・兼店舗(といっても非常に大きくてきれいな居心地が良さそうな木の家であった)で雑貨店を営む方から、自宅前の庭園の中にある蓮池のハスの花が見ごろなので、花が一番きれいに咲く早朝のコンサートを企画したいとのお話をいただいたのである。しかし、初めての試みというものには、いろんなアクシデントが付きまとう。まず朝7時には、夏の暑い日差しの太陽がかなり昇っているということである。天気も良かったので、集まられたお客様は早々に汗を額に浮かべていたのであった。そして庭園内の樹木に群がる「セミ」が大音響で、しかも大量に鳴いているではないか。パンフルートの音色がかき消されんばかりの勢いである。早々に演奏を切り上げて、別の場所に移動することになった。片づけを使用としたところ、私の近くに座っていらしたお客様が教えてくださったのであるが、蓮池にいた「トノサマガエル」が、池から上がって、私の足元50cmのところでじっと演奏を聴いていたとのことであった。池の水に漬かることができるカエルはさぞや涼しくパンフルートの音色を楽しんだことだろう。いやーPAを使わずの生音のパンフルートの屋外コンサートは、繊細な音のニュアンスを伝えるのが難しいなーと、改めて勉強になった。
 そのコンサートの帰りにトラブル発生である。国道を高速走行中に私の自家用車の右後輪が突然の爆発音と共に「バースト」してしまったのである。運良く、下りる予定の側道手前でのバーストだったので、側道を出たところの広い路肩で、タイヤ交換をすることとなったのである。昼前の灼熱の太陽に照らされ、大粒の汗だまをぽたぽたとあごから落としながら、数十分かけて、タイヤ交換を終えたのである。土砂降りじゃなかったこと、夜じゃなかったこと、高速道路上でのトラブルじゃなく、事故もなかったこと。そんなことを思えば不幸中の幸いであったと言えようが…早朝コンサート直後の私には少々しんどい作業となった。自宅に帰って、シャワー&しばしの爆睡となってしまった。
 そして誕生日の最後の出来事、それは新倉敷駅前のビル内で行った、夜八時からのコンサートであった。パン教室5周年記念の行事として企画されたパンフルートコンサートである。パンつながり(?)である。しかし初めての経験が、また私を待っていたのであった。パン教室の会場はコンサートを行えるような広さはないので、なんと…その教室前の廊下をコンサート会場にするといった、斬新な企画になっていたのであった。上下左右をコンクリート面で囲まれているので音の響きは、以外と良かったのであるが… 幅2m高さ3mほどの廊下にイスを横一列に四脚、その列が後にずらっと続いているのである。廊下自体は長い直線の廊下なのであるが、コンサートが行われている空間は、まさに40人乗りくらいのバスの車中のような雰囲気になったのであった。廊下の照明は、さほど明るくなく、お客様の顔もウスぼんやりにしか見えない。懐かしい童謡唱歌を演奏するとお客様がみんな合唱を始めだす… なんだか自分が防空壕の中にいるのか、もしくは「引き揚げ船」の中にいるような錯覚を一瞬覚えたのは、冷房の効かない廊下の「熱帯夜」的暑さのせいだったのかもしれない。
そんな空間のおかげか、会場は一体感に包まれ、楽しいコンサートを繰り広げることができたのであった。さすが歌声の街「玉島」なのである。
 明日から三日間は、香川県直島に滞在する予定である。