移動、移動の連続となったここ半月である。嵐山で行われた観月会では、平安人の衣を身にまとい渡月橋上流の川面で二時間パンフルートを吹き続ける演奏を二日間行った。雅な雰囲気を演出するように、和音階を組み入れた即興演奏を試みた。月は見事に、渡月橋から上るように見え、嵐山の雰囲気とあいまって、私のイマジネーションを刺激し、私の想像以上にメロディーがパンフルートから溢れてくるではないか。これは本当にびっくりした。
 九州は、まず大分県の国東半島に数日間滞在した。数年前からお世話になっている竹材業者から竹の買い付けと、自分の足もしっかり使って上質な竹の確保に動いてみたのである。国東半島のあちこちで地元の方から竹の情報を収集していると、何だか「ひとりダーツの旅」を行っている気分になった。どうやら年内にもう1回大分に行かなくてはならないようだ。そんれから、福岡県に移動。パンフルートの納品と納品先のご家庭でホームコンサートをさせていただいた。それはそれは楽しくて充実した内容のアットホームなコンサートになった。大分での車中泊連泊の疲れも心から身体からとれたのである。福岡で2度目のコンサートになるが、「福岡のみなさんにも喜んでもらえると思うと、ほんのこつうれしかと!」なのである。
 翌日には岡山の牛窓で演奏。セイラビリティという、障害者のかたたちにセーリングを楽しんでもらおうという全国組織のNPOの年に一度の集まりの場での演奏である。夜の宴の中での演奏となったが、みなさん私の演奏とトークを楽しんでいただけたのがこちらも嬉しいのである。みなさんの健康的な日焼けがまぶしかった。さて、その翌日は岡山市内の西大寺で「世界食料デー岡山大会」でオープニングに演奏させていただいた。演奏後には世界の飢餓の現状とその打破のために行うべきことについての講演をいただいた。食料という観点から、日本をそして世界を見ていくと、課題が山積みなのだということがわかるのでる。一歩ずつ少しずつ解決に向けての行動を… その始まりは(きっかけは)人の心の前向きな選択からなのである。
 その翌日は大阪で、地域の中高年以上の方が多く集まられた場で演奏させていただいた。実は昨年の5月のNHKラジオ「ラジオビタミン」に出演した放送を、この会のお世話さんだった方が聞いてくださっていたことが、そもそものきっかけである。演奏終了後、新大阪駅まで歩いて帰ったのであるが、もう1箇所立寄りたいところがあった。それは淀川キリスト教病院である。たしかNHKテレビ「プロフェッショナルの流儀」でこちらの病院の看護関係の方の特集を拝見したのが、そもそも私がこの病院を訪問しようと思ったきっかけである。詳しい思いは後日書くとして、何はともあれアポなしではあるが、訪問して、自己紹介・楽器の説明・演奏家になった経緯・こちらで演奏したい思いなどをお話させていただいた。担当者の方は見ず知らずの男の突然の訪問と申し入れにも、丁寧に対応くださり、私の思いも汲み取っていただいた。来年の5月以降のいつか、まだ未定ではあるが淀川キリスト教病院のロビーコンサートで演奏させていただけそうである。
 最近、ふっと思うことがあるのだが…私のこの活動は「職業」なのか。そのひとことではおさまりきらないことをやっているような気がする。しかもひとりの活動である。結構しんどい思いも重ねてきているが…お金とは関係ない活動を自発的にやってしまっている。俺は一体、何様なのか。   そんな思いも時に頭をよぎるが、「心のままに感じ、動く」そこは大切にしていきたいと思っている。職業演奏家としての自分と、それ以外の自分。どっちも自分なのである。